ビジネスで利益を得るにあたり、マイクロコピーの貢献度は、ユーザーにとって何が良いのか、という理論的な質問だけでは計ることができません。
いくつかの現実的な質問の例を挙げましょう ― どれくらい多くのユーザーが:
- 入力フォームの一部を記入し、途中で止め、ページを離れるでしょうか?
- ページの下部まで全てを読み、しかし登録することなくページを離れるでしょうか?
- 買い物カゴに商品を入れ、少し検討し、そして破棄するでしょうか?
- サイト登録を終えた後、音沙汰がなくなってしまうでしょうか?
効果的なUXライティングが、ユーザーが滞りなく作業を完了することを助けるのは明らかです。
これはUXライティング(マイクロコピー)への投資がROI(投資利益率)を保証し、製品の利益率を高めるだろうことを意味しています。
どのように?
マイクロコピーは、ユーザーが製品を放棄する要因となる壁を取り除く一方で、それと同時にユーザーがうまくプロセスを踏んでいけるよう促します。
マイクロコピーがユーザーエンゲージメント(ユーザーの愛着)を高めるための方法は次の4つです。
目次
より明確な進路の提示
より多くのユーザーが作業をうまく完了する
時に、ユーザーは技術的な難しさを理由にプロセスを放棄してしまいます。
その理由は、彼らがただ―
- 何を記入すべきか分かったからです。
- 専門用語に精通していなかったからです。
- 送料の記載を見つけられなかったからです。
- トグルやチェックボックスが何をするものか知らなかったからです。
- 彼らが求める情報がどこで見つけられるのか知らなかったからです。
- あるいは迷惑で不明確なエラーメッセージが表示されたからです。
これらは私が述べたように、技術的な難しさに他なりません。
これらの問題は単純ですが、ユーザーが製品とプロセスを放棄することに繋がっています。
しかもこうしたユーザーの行動は理にかなっていると言えます。
なぜ彼らは何かを間違うリスクを冒さねばならないのでしょう?
そして、問題が単純であるように、解決策も単純です。説明しましょう。マイクロコピーを用いるのです。
優れたマイクロコピーが導入されれば、技術的なことに関する質問が発生すると考えられる全ての場所について説明がなされ、入力の過程やフォームは単純で、簡潔で、明解で、そして簡単に完了できるものとなります。
例
PayPalは精度の高いヒントを用いることで、潜在的な問題に対処し、ユーザーがフォーム全体の道沿って進むのを助けます。
必要に応じて、さらに詳細な説明を閲覧できる小さなリンクを追加しています。
Ebayは購入するかしないかという判断を下すにあたって、到着日時と送料が二つの重要なパラメーターであり、これらの情報なしにユーザーは簡単に決済に移行しないことを理解しています。
ここでは、彼らがこの二つに関しては、最も明確に分かりやすく言葉を惜しまず説明していることが見て取れます。
Typeformは、ユーザーが目にするあらゆる言葉について説明を記し、それらには最後にフォームに記入する人のための指示が含まれているため、ユーザーは途中で止まったり、ためらったりすることがないでしょう。
Googleはユーザーに、ただ単に設定ページを理解できないがために設定を諦めてほしくないと考えています。
そのため一覧に説明付きのツールチップを設置しています。
安心感のある環境
より多くのユーザーがうまく作業を完了させる
デジタル製品はその製品ならではの懸念を引き起こします。
その懸念の中のいくつかは、セキュリティーやプライバシーといった、一般的かつ永続的なものです。
そして他のいくつかの懸念は「後から変えることができるだろうか」といった、その製品に特定して湧き上がるものです。
疑惑や疑念で満ちた環境はビジネスにとっては悪影響です。
この種のプレッシャーは、ユーザーを躊躇させ、その行動を遅らせ、最終的に放棄させることに繋がります。
こうしたユーザーの反応は全くもって正常です。
下記のような事柄を知らないにも拘らず、なぜユーザーが作業を進める必要があるのでしょうか。
- なぜあなたはユーザーの個人情報を求めているのでしょうか?
- あなたはユーザーのメールアドレスを得て、その後どうするのでしょうか?
- 到着した製品がユーザーの期待するものでなかった場合、どうなるのでしょうか?
- お試し期間が終了した後も、あなたがユーザーに請求を続けていた場合、どうするのでしょうか?
- このプロセスは安全でしょうか?他にもたくさんあるでしょう。
数々の穏やかな言葉を用いて、これらの(正常な!)恐怖に対処し、それらを緩和することは、ユーザーが完了までのプロセスを踏むに値する信頼を与えます。―これがマイクロコピーの目標です。
例
Claire’sはバイヤーの電話番号を必要としますが、顧客がこうした情報を共有したくないことも理解しています。
そのため、下の画像のように顧客を安心させる約束を加えるのです。
短い文で構いません。単に「安全」という言葉がありさえすれば、セキュリティーに対する懸念を和らげるには十分です。
あなたがセキュリティーをロックする方法を知っていればさらに良いでしょう。Europcarがどのように実行しているか見てみましょう。
こちらの画像はDurexのものです。
誰もが無料トライアルを開始するのを恐れるのは何故でしょうか?
なぜならば、恐らく後からお金を請求されるだろうことを知っているからです。
Hotjar はこうした不安をすぐに和らげ、長く複雑なプロセスを恐れる人々をうまく落ち着かせてくれます。
CarbonmadeはWebアドレスを決めるプロセスが難しい課題であるということを認識しています。
しかしながら、ユーザーがアドレスを決められないことを理由にプロセスを放棄してほしくないため、次の画像のようにユーザーを安心させます。
MuncheryはユーザーがFacebookを利用してサインインすることを望んでいます。
しかしユーザーがそうしない理由も理解しており、ユーザーの懸念を解消する一言を大きな文字で掲載しています。
今現在の重大な関心事:Amazonはチャリティープログラムに参加してほしいと考えている…
しかし自分はAmazonのサイトで他のプロセスの途中である、というときのために、Amazonは次の画像のような約束を取り付けます。
より高いモチベーション
より多くのユーザーアクティビティー
マイクロコピーはコンテンツマーケティングではありませんが、アクションを起こし続け、製品内でのトラフィックを増加させます。そしてユーザーの前進、探索、行動を後押ししています。
- Webサイトやメーリングリストに登録したり、プッシュ通知を確認したりする際に、マイクロコピーはそれらの価値をユーザーに知らせ、登録するべき理由を説明します。こうして加入者の数が増えていくのです。
- オンラインショップ上の空のカートや買い物カゴにおけるマイクロコピーは、ユーザーがショップへ戻るためのセールストークを作り出します。
- ユーザーがまだ試していない機能のあるページについて、マイクロコピーは、ユーザーが実際に試すように後押しします。
- ボタンにおけるマイクロコピーは、ボタンをクリックすると何が起きるのかを考えさせるでしょう。
- 思ったような検索結果が出なかった場合は、マイクロコピーがあなたを諦めないよう促し、検索し続けるよう後押しするでしょう ― ただしわずかに違う方法をとるように促します。
優れたマイクロコピーは、プロセスを続ける理由がない、あるいはどのように進めるのか分からないといったことを理由に、ユーザーがプロセスの継続を諦めざるを得ない致命的な終わり方に直面することは絶対にないと確証しています。
このことが、製品における次のステップが常にクリアになることを確実にしているのです。
それはつまり、なにをすべきか、さらに重要な、なぜか、という部分のことです。
アクションを起こし続けるマイクロコピーの詳細に関しては「Microcopy: The Complete Guide」の第三章を参考にしてください。
例
Busted Tees の買い物客が買い物カゴに何も入れていない場合、ただ文字を張り付けるだけでなく、真っすぐに買い物に連れていく魅力的なリンクが表示に含まれます。
これはサイトのトラフィックや店への滞在時間を増加させます。
ユーザーをWebサイト、アプリ、その他のシステムに登録するように説得する場合、登録した後の生活がどんなに簡単で便利であるかを思い出させることは価値があるでしょう。
こうした、登録プロセス中の小さなリマインダーは、ユーザーがいずれ他の登録フォームを記入する際のモチベーションを高めることとなります。
この画像は小さいけれど効果的な Nordstormのリマインダーです。
そしてこちらは Typeformのものです。
プッシュ通知の場合も同様のことが言えます。
ユーザーにメッセージを送りたい場合はどうしましょうか?正当な理由を彼らに与えましょう。これは Funnsterの場合です。
Thieveのポップアップの入り口には(とても大きな)小さな違いがあります。
Awesome(素晴らしい/ヤバい)の代わりに Start(開始)というボタンがあったと想像してみてください。
どちらがショッピングの雰囲気にふさわしいでしょうか?
ユーザーがあなたの製品の全ての機能をチェックするのを確実にするために、まずユーザーにどのような利益があるのかを記載する必要があります。
次の画像にあるWazeは、ユーザーをPlanned drive機能を使う気にさせるでしょう。
Stop, Breathe & Thinkのアプリが、ユーザーにお勧めしたいアクションはアプリを使った瞑想です。
この目的のために、スタートボタンの隣にはソーシャルプルーフがあり、これは一般的で効果的な動機へと繋がります。
より強い感情的な関わり
より多くのユーザーの行動
Clifford Nass教授による、ユーザーとデジタルインターフェイスの関係についての研究の結果、とりわけユーモアがユーザーの気分をより良くし、ユーザーを笑顔にするブランドを愛させ、さらなる協力に向けて心を開かせることがわかりました。
驚くことではありませんが、ユーザーを褒めたたえたり興奮させたりするインターフェイスについても同様です。
こうした人と機械の間にある感情的な関わりは、信頼度を高め、ユーザーがより意欲的に行動する、エネルギーに満ちた雰囲気を作り出しています。
ユーザーを気持ちよくさせるのは素晴らしい体験のためのみならず、ビジネスにも最適なのです。
例
これは The Outline newsletter に登録した後の確定メッセージです。
面白くて、すぐに彼らの破壊分子的な性質へと結びつきます。
上で述べてきた通り、私たちは私たちを笑わせてくれるブランドを好むのです。
安全なパスワードを決めることは難しい課題です。
ここでは、スタートする前にユーザーが諦めることなく、セキュリティー要件を満たすパスワードを設定することを確実にするために、1Passwors はタスクを楽しいものにし、少しのユーモアで面白くさせます。
下の画像にある、Clue app に登録した後に出てくる小さな賛辞の言葉は、コラボレートする意欲を高めます。
ついにGoogleが私たちを必要としました!ここで弱みを見せたのです。これはとても気持ちが良い!
私は、マイクロコピーはビジネスに適したものであるという点で、私たちの意見が一致すると思います。
優れたマイクロコピーの利点は下記の二点です。
1.マイクロコピーは、ユーザーが複雑な(あるいは複雑ではない)プロセスを理解し、緊張を和らげ、ストレスや恐れを取り除くことを助け、進路を明確にします。
これらの全てがユーザーをフィニッシュラインに導くのに役立ちます。
2.さらに、マイクロコピーはユーザーが製品内での作業を滞りなく進め、モチベーションや感情的なエネルギーを増やすのに役立ちます。
そのため、製品を使用することに対して、ユーザーはさらに多くの幸せと喜びを感じるでしょう。
PS.タイトルにあるROIについて、声とトーンのデザインに関するROIについてはこちらをお読みください。
方程式には、ユーザーとビジネスに加えて、惑星と社会というサードパーティーがあり、それらはアクションを完了することから利益を得ています(あるいは失っています)。Erika Hallの素晴らしい記事「Thinking in Triplicate」を読むことを強くお勧めします。
イスラエルよりキネレットさんの記事をお届けしました。
サイトやアプリ、製品を利用する中でユーザーがどんな心理状態になっているか?
相手の気持ちを汲み取ることで、はじめてどんなマイクロコピーを挿入すべきかが理解できます。製品のターゲット層に近い年代・性別の友人や家族に頼んで、実際に使ってもらうのも一つの手です。
設計者側としては見えなかった、つまずきやすい箇所が発見できるかもしれませんよ。