コピーライティングにおけるボイスアンドトーンとは
コピーライティングにおける「ボイス」とは、実際の人の声のように、変わることのない一貫性を持ったものです。文章にボイスを設計することで、企業、ブランドの個性やキャラクターを表現します。他社との差別化になるだけでなくブランディングの一面を担います。
「トーン」とは、文章に情緒的な抑揚を持たせるものです。もしトーンがなければ、ロボットのように無機質な文章になってしまいます。 例えば、上司と話すときのトーンと、友人と話すときのトーンが異なるように、場面や相手に応じてたえず変化するものです。
ボイスアンドトーンは、企業、ブランドによって様々です。
例えば、ユーザーに生年月日の入力を求める際、同じ項目でもブランドによってそれぞれ理由の伝え方が変わります。
例)■誠実で真面目な社風のナイキ(Nike)
児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)を順守するために必要です。
例)■ユニークなヴィンテージ品を販売するJ・ピーターマン
すみません、私どもの弁護士に聞けと言われたので。
(参考『UXライティングの教科書ーユーザーの心をひきつけるマイクロコピーの書き方』』キネレット ・イフラ著、仲野佑希監修、郷司陽子訳、翔泳社)
ボイスアンドトーンの必要性
スタンフォード大学教授クリフォード・ナス(『お世辞を言う機会はお好き?コンピューターから学ぶ対人関係の心理学』(邦訳、福村出版)の著者、人とコンピュータとのインタラクションの研究における第一人者)の研究によると、コンピュータを操作する人は、人間社会で対人のコミュニケーションを取るときの一般的な規範に従うことが分かっています。
つまり、私たちはコンピュータやデジタルインターフェイスと向き合うときも、それがまるで人間であるかのように振る舞うのです。
ボイスアンドトーンを設計することは、ユーザーとの距離を縮め、信頼関係を築き、行動への動機付けにつなげることができます。
ボイスアンドトーンの事例
Webサイトにボイスアンドトーンを設定する際は、そのサイトを訪れるターゲットにふさわしい表現を設定する必要があります。 たとえば新卒者採用サイトは「新卒者を採用する」という同じ目的を持っています。し かし、会社のカラーや求めている人材によってボイスアンドトーンは全く異なる物になります。
例:株式会社富士薬品採用情報サイト
信頼感と落ち着きのあるボイスが設定されています。
例:星野リゾートグループ 採用サイト
高級感ときらびやかさのあるボイスが設定されています。
例:講談社2017年度採用サイト
好奇心が感じられるようなボイスが設定されています。
ボイスアンドトーンの作り方
ボイスアンドトーンはできるだけ早く設定しておくと良いでしょう。
イスラエルのマイクロコピー専門スタジオNemalaの代表、キネレット ・イフラによると、ボイスアンドトーンの設定は2つのステージから作られます。
【第1ステージ】ブランドを知る
①ビジョンとミッションを定義する
そのブランドはどのように世の中を変えたいと望み、どんな方法で達成しようとしているか?ビジョンやミッションを明らかにする。
②価値を定義する
ブランド活動の指針となる理念や基本方針はなにか?ブランドにおける最重要価値を5つ選定する。
例)創造性、ユーモア、親しみ、熱意、伝統、挑戦、優しさetc…
③パーソナリティを言葉で伝える
そのブランドが、ひとりの人間だとしたら?性格や人柄、どのような言葉遣いをするか想像する。
【第2ステージ】ユーザーを知る
①ユーザーの人口構成を明らかにする
語りかけたいのはどんな人か?年齢、性別、生活圏、教育レベルなどを想定する。
②ターゲット顧客のニーズと問題を見極める
ユーザーが実際の操作で何に手こずり、気持ちの上では何が負担になっているか、彼ら自身の言葉を聞く。そのサービスによって、ユーザーがどのようにネガティブな物事を解決できるかを明らかにする。
③ターゲット顧客の夢や希望を言語化する
そのサービスによって、ユーザーがどのようにポジティブな収穫を得られるかを明らかにする。
④ターゲット顧客の行動を阻む要因を見極める
金銭的な負担や、個人情報の提供に関する抵抗感など、どんな場合にもマイナス要因は付きものである。それらを洗い出し、ユーザーが納得できる理由をあらかじめ添える。
⑤ターゲット顧客が特定のブランドを好む理由を調べる
ターゲット顧客が、似たような他社のブランドではなく、あなたのブランドを選ぶ理由はなにか?
⑥ブランド/プロダクトとユーザーとの関係性を定義する
ユーザーとの間にどのような関係性を築きたいか?
例)友人、親友、先生、ビジネスパートナー、売り手と買い手etc…
【第3ステージ】関係者から最新の発言を聞き取り、まとめる
プロジェクトの主要メンバーを集めてグループインタビューを実施する。ビジョン、ミッション、ブランド価値、ブランドの個性、ユーザーのニーズ、ユーザーとの関係性について質問していく中で、ブランドの個性やターゲット顧客像を一貫性のあるものにする。
【第4ステージ】スタイルガイドを作成する
第1〜4ステージまでに集めた情報を整理してまとめ、スタイルガイドを作成する。コピーライティング、コンテンツ作成の際はこのスタイルガイドをもとにライティングを進めてゆく。
【まとめ】
ボイスアンドトーンのスタイルガイドの書き方に正解はありません。スタイルガイドをインターネット上で公開している企業もたくさんあるので、参考にしてみると良いでしょう。
・セールスフォース(salesforce)
https://trailhead.salesforce.com/ja/content/learn/modules/writing_style/writing_style_introduction
・メールチンプ(mailchimp)
https://styleguide.mailchimp.com/voice-and-tone/
(参考『UXライティングの教科書ーユーザーの心をひきつけるマイクロコピーの書き方』』キネレット ・イフラ著、仲野佑希監修、郷司陽子訳、翔泳社)
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