企業の職場環境や行政の施策を考え実施する時など、数多く取り入れられているのが行動経済学の「ナッジ理論」です。
「ナッジ理論」には、強制したり、過剰な報酬で人々に行動させるのではなく、ほんの少し工夫するだけで世の中を良くすることができる可能性があります。
今回は、そんなナッジ理論をどうやってビジネスで活用していくのか解説していきます。
目次
ナッジとは
ナッジ(nudge)とは、英語で「ひじで軽くつつく、そっと後押しする」という意味の言葉です。報酬や罰則・ルールで行動を強制したりすることなく、小さなきっかけで人々の行動や意思決定に影響をあたえる手法のことです。
2017年にノーベル賞を受賞したリチャード・セイラー教授とハーバード大学のキャス・サンスティーン教授により2008年に出版された『Nudge : Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness』で提唱されたのがナッジ理論です。
EASTフレームワーク
EASTとは、ナッジ理論を活用する際に指針となるフレームワークです。「Easy・Attractive・Social・Timely」の頭文字から名付けられました。
- Easy 簡単にする
- Attractive 魅力的にする
- Social 社会的にする
- Timely タイムリーにする
ナッジ理論は、個人の目標達成や企業、行政の施策にも取り入れられ幅広く使われていますが、今回はビジネスに絞ってどのように活用できるのか具体例を見ていきます。
Easy(簡単にする)
簡単にするには、以下の要素を意識します。
- 分かりやすく単純な言葉を使う
- めんどくさいことを避ける
- 顧客にとってほしい行動を初めからデフォルトとして組み込む
例えば、動画配信サービス「Netflix」の会員登録時に必要な情報は3つのみ。
メールアドレス・パスワード・決済方法のみで、名前すら不要です。
必要最低限の情報だけの項目に絞り、顧客にとってめんどくさいことを極力少なくします。
他にも、コストコに行くと入口でびっくりするほど大きなカートを渡されます。
これはデフォルトで大きなカートを渡すことで、そのカートを埋めたくなり、ついつい買いすぎてしまう効果を狙っています。
Attractive(魅力的にする)
魅力的にする時に意識する要素は2つです。
- 感情や人間関係に訴える
- 具体的なインセンティブを提示する
サブスクサービスの初月無料は具体的で魅力的なインセンティブですし、レストランでおいしそうな料理の写真付きメニューがあれば、ない場合と比べて「おいしそう」という感情になり魅力的に映ります。
具体例としては、Amazonプライム会員の会員ページがあります。
今まで、プライム会員で得した「配送料、商品価格、ポイント」を具体的に数字で示し、会員特典まで分かるようになっています。プライム会員を解約しようか迷った時に継続したくなるような魅力的なページとなっています。
Social(社会的にする)
人は周囲(社会)の人々が取っている行動を見て、無意識に模倣して行動する傾向があります。また社会的に意義のあることだと訴えかけることで選択や行動を後押しすることを考えます。
ECサイトでの具体例は、Amazonや楽天市場の商品ページで「100,000人が選んだ〜」などのコピーや、商品レビューの「5段階評価で4.8獲得」など、多くの人が使ったり満足したりしていることをアピールすることで、無意識にみんなと同じという社会的な帰属意識が生まれ商品を買ってもらいやすくなります。
Timely(タイムリーにする)
タイムリーにするには、以下の要素で効果的なタイミングを考えます。
- 時間の流れで考える(ライフステージ、1年間、1カ月など)
- 今行動してもらうことを考える
ライフステージごとの健康や美容に関する悩みであれば
- 10代 肌荒れ、ダイエット、身長などの外見面
- 20代 仕事によるストレス、肩こり、腰痛
- 30代 女性なら出産、男性なら薄毛や肥満
- 40代 健康診断の結果などによる内臓疾患やガンに対する心配
- 50代 実際に体にでる症状(痛みや衰え)、内臓疾患やガンへの罹患
などが考えられ、年代別の悩みに訴求するものが変わってきます。
1年間のタイミングで考えると、お正月から1月末にかけては1年間の抱負や計画を立てる人が多いと思います。そんな人たちを後押しするように、タイミング良く資格取得講座やスポーツジムへの入会などのキャンペーンを実施すると受け入れられやすくなります。さらに、ライフステージを意識した顧客にアプローチできればより効果的でしょう。
例えば、肥満や体力の衰えが気になる30代男性をメインターゲットとした、1月のスポーツジム入会キャンペーンなどです。
また、キャンペーンの終了日を設定し、終了直前にはメールなどで通知して行動を促します。
EASTフレームワークの使い方
ナッジ理論のEASTフレームワークを使う際は、EASTの要素すべてを含む必要はありませんが、要素をいくつか組み合わせて使うといいでしょう。
また、EASTの要素にあわせて具体的なコピーを考える時には、行動経済学の理論を活用したマイクロコピーが効果的です。
具体例として参考になるのは、U-NEXTの申し込みページです。
「登録は3ステップで簡単」「いつでもすぐにキャンセル(解約)できます」でEasyの要素を、「31日間の無料トライアル」でAttractiveな要素を、「今すぐはじめる」というボタンでTimelyの要素を組み合わせています。
また「登録は3ステップで簡単」「いつでもすぐにキャンセル(解約)できます」はそれ自体がクリックトリガーと言われるマイクロコピーです。「31日間の無料トライアル」は「31日間無料で視聴する」などマイクロコピーとしてABテストすることも可能です。
クリックトリガーや行動経済学の具体的なテクニックの詳細はこちらの記事を参考にしてください。
クリックトリガー
https://microcopy.org/case_studies/clicktrigger3/
行動経済学の具体的テクニック
https://microcopy.org/case_studies/behavioral_economics/
良いナッジと悪いナッジ(ナッジ理論を使う時の注意点)
ナッジ理論は、無意識に人の行動を後押ししますので使い方によっては信用を失うことになります。
例えば、会員登録ページで「登録は簡単」「解約はすぐに出来ます」などのコピーで会員登録してもらいます。ですが、いざ解約しようとすると、解約は電話でしか受け付けなかったり、わざと解約ページを見つけにくくするような事例があります。
あくまで、顧客の負担を減らしたり、不安を解消したり、行動を後押しする情報を提示する目的でナッジ理論を活用しましょう。
まとめ
今回はナッジ理論の活用方法について事例を交えて解説しました。
ナッジ理論のEASTフレームワークで戦略や構成を考えて、要素ごとの具体的なコピーを考える時はマイクロコピーが役に立ちます。
必要に応じて取り入れ、ぜひ活用してみてください。
ナッジ理論のような行動経済学とマイクロコピーは非常に相性がよく、組み合わせて考えるのが効果的です。
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